2016年6月28日火曜日

天国と地獄11

やはり闇の組織に歯向かうなんてことは、無意味なことだと思い知らされた。奴らは、一度、狙いを付けた獲物は、簡単に逃がしたりしないのだ。骨の髄までしゃぶり尽くし、ボロボロになって、使い道がなくなるまで放さないのだ。
 おもむろに部屋に入ってきた男達は、無言のままで俺を裸に剥き、ケツの穴に湯を流し込んだ。男が好きだろうと、そうでなかろうと汚い穴に突っ込むのは勘弁といったところだろうか。 今更、男たちに反抗する気力も体力もなかった俺は、されるままになっていた。まともに食事もしていないから、大して汚物もでず洗浄は簡単に終わった。
 ベッドで四つん這いになり、前後から男たちの太い肉棒を突っ込まれた。それは、セックスではなく、交尾ですらなかった。目的は快楽ではなくて、調教に違いないのだった。男の肉棒を穴に突っ込まれて、性処理の道具になり切ることを強いられる。犯される側に、快楽は必要なくて、突っ込む側が興奮し、気持ちよくなりさえすればいい。血の通ったオナホールのようなものだ。
 不思議なことに諦めてしまうと、それほど苦痛でもない。肉体が慣れ始めているのだろうか、いや痛みを感じないのは、それ以上に心が傷ついて、痛過ぎるからかもしれないけれど。
 男たちはこういうことに慣れているのか、作業として性器を堅くすることができるようだ。全然、興奮している風でもないし、気持ちよさそうにしている訳でもない。これなら、まだ、男が好きでたまらず、俺を犯したくて仕方がない変態に突っ込まれる方が、まだ求められているのだと思えてしまう。

 男たちにレイプされながら、俺は不思議な感覚を得ていた。
 昨日まで、ちやほやしていた多くの人間たちが、掌を返したように敵に回った。寄ってたかって俺を避難し、貶め、バトミントン界の恥だとまで言った。誰一人として、俺を庇う人間はおらず、知らない人間にまで最低だと罵られた。記者会見では、俺と先輩が蒼白になって、頭を下げ、謝り続けるのを、汚いものを見る目で嘲笑し、罵倒した。さらに、聞いて意味があるとも思えない当たり前の質問を繰り返し、萎縮しきった俺たちをさらに打ちのめした。今現在、この世界に、俺を必要としてくれる人間なんていなかった。
 自分でも意味なんて分からない。だが、地獄の底で、鬼達に犯されながら、身体が疼くのを感じ始めていた。さっきまで、全く感覚がなかった身体に、血が通い始めた感触だ。ドクリ、心臓が鼓動を打つ。ゾクリ、背筋が泡立つ。男の堅い肉棒の先端が俺の何かを刺激し始めていた。
 肉棒が出入りしてるケツの穴に、熱い小さな火が燈る。じわじわと広がって、内臓全体に染み込んでゆく。
 あぁそうか。何かを盛られたのだ。もうオリンピック選手じゃないから、ドーピングに気を遣う必要もなくなった訳だ。 意味なんか分からない。だが、それはもう抗いようがないくらい大きなうねりとなって俺を満たしていた。そして、突然、溢れた。
 脳の深い底の方で、何かが弾けた。と同時に、俺のケツの穴は、性器と化した。
「あぁはぁあぅ。。。あぅあぅ」
 いつの間にか、俺の股間は痛いほどに膨張していて、先走りさえ滲んでいる。性器と化したケツの穴は泡立って、男のシンボルを放すまいと絡みついていた。世界が反転し、溢れる光の中で漂っていた。苦痛でしかなかった責め苦は、いまや快楽の甘い蜜だ。突っ込まれるだけの穴だった口は、愛しくて仕方がないものを頬張る性器と化した。ねっとりと舌を絡め、愛しい肉棒に奉仕した。恍惚となりながら、いつまでも太くて硬いものを受け入れていたかった。
 後で、自己嫌悪に苛まれるだろう予感はあったけれど、圧倒的な快楽の粘液の中で、溺れることだけが救いだと無理矢理思うことにした。


2016年6月27日月曜日

天国と地獄10

今まで生きてきて、これほど後悔し、善後策について悩んだことはないだろう。何をしていても男に突っ込まれている自分の姿が脳裏を過ぎり、吐き気を催すほど気分が悪くなった。このまま、こんなことを続けていたら、俺は壊れてしまう。だが、バトミントンを捨てて、別の生き方をする勇気もない。どうしたらいいんだ。
 頭がショートするほど考え続け、これ以上、男に身体を売るのは嫌だと組織に伝えた。組織の反応は、想像していたものとは違って、簡単な返事がひとつ返ってきただけだ。
「わかった。いいだろう」
 ただ、それだけだった。
 組織が使っている事務所に出向くときは、吐き気と悪寒と胃の痛みで、今にも死にそうな体だったが、帰りは気分も晴れて、死ぬほど悩んだことが嘘のように気分爽快だった。組織の出方には、一抹の不安があるものの、今更、考えてみても仕方がないことだった。
 静かな日常が戻ってきて、平穏に過ごしていたある日、体育館のロッカールームに、血相を変えた監督が走り込んできた。
「おまえ!これは本当なのか!?」
 ファックス用紙を握りしめた監督は、見たこともないほどに狼狽していた。
「おまえと高階は、違法カジノなんかに出入りしていたのか!」
 あぁやはり。只で済む訳がないと思っていたがやはりそうか。変に納得している自分があった。
 監督の話によると、ファックスがあったのは某スポーツ新聞社からで、公表する前に裏を取ってきたのだそうだ。蒼白になっている俺を見て、監督には、そのことが事実であると理解できたようだった。これから役員を入れた緊急会議が開かれるらしい。予想はしていたことだが、頭が真っ白になった状態の俺は、魂が抜けた操り人形のような体で、急ぎ足の監督の足元を眺めながら歩くしかなかった。

 スポーツ新聞が発売された夕方には、主要なマスコミ各社が、カメラ機材などを抱えて、本社正面玄関を占拠した。テレビの情報番組では、先輩と俺の写真や過去の映像が何度も繰り返し流され、「プロバトミントン選手の高階・神谷選手が違法カジノに出入りか?」の極太文字が躍っている。
 問題は、既に俺たちを置き去りにしたまま走り出してしまった。俺たち2人がそこに、居ることすら眼中になく、マスコミは乏しい画像や情報を延々と垂れ流し、会社や協会、JOCなどは今後の対応をどうするかについて、混乱を極めた。
 テレビの情報番組によると、俺たちが呼び出された違法カジノは、もう既に影も形もないらしく、あるビルの1室で違法賭博が開催されていたと伝えられている。俺たちのことを世間にリークして、見せしめにする前に、賭場をたたみ、別の場所に移転したのだ。裏社会のえげつないやり方と処理の速さに驚くしかなかった。
 その後、俺たちは嵐の真っただ中に放り込まれ、もみくちゃにされ、翻弄され、そして、会見後、報道内容が事実であると確認されるや否や、公開処刑よろしく吊し上げられた。
 後日、会社は懲戒解雇、日本バトミントン協会は無期限の試合出場停止処分、JOCはオリンピック選手登録を抹消の各処分が発表され、俺は全てを失い、完全に社会から抹殺された。マスコミに追い回されるのが嫌で、都内の某所に隠れ、身を潜めて嵐が通り過ぎ、世間が早く忘れてくれるのを待つしかない。
 俺は想像していた以上に身も心もボロボロにされた。再起不能の状態で、魂が抜けきった生きる屍でしかなかった。食事もバトミントンも、友人との会話も笑いも幻のように消え失せ、真っ暗な部屋で胎児みたいに丸くなって、ただただ時を費やした。俺の面倒を見ようとしてくれる家族の言葉にも耳を貸さず、食事にさえ手を付けない。このままだと死ぬしかないなと、動かない頭で考え始めたころ、家族しかしらない筈の場所に、訪問者があった。
 ドアの向こうの眩しい光を背中にして、屹立した男が2人。毛布をはぎ取られ、汚れたジャージを破られて、2人の男に無理やり犯された。

2016年6月21日火曜日

天国と地獄09

晴れやかなドアマンの笑顔に迎えられつつも、陰鬱な気分でロビーに進む。この間とは違う黒服の男が近づいてきて、さりげなくルームキーを握らせ、部屋の番号を囁いた。
 先日、教えられた通りに準備を済ませ、バスタオルを腰に巻いてソファに沈んだ。とっくの前に陽は沈んでいたが、高層ビル群の窓のほとんどは電気が灯っている。窓際に立って、走っている車や歩いている人影をぼんやりと眺める。
 行き交う人たちにも日々の悩みがあるのだろうが、俺のそれはかなりヘビーな状態だ。今更、悩んでみても、後悔してみても始まらないけれど。
 ダブルの部屋には、まだひとりきりで、空調の機械音だけの静寂が占めているけれど、これから1時間後に、この空間は俺にとって地獄に変わる。ため息をひとつ。ゆっくり深呼吸をして、もうひとつ。
 しばらく窓外を眺めていたら、背後で電子錠が開錠される音が響いた。魔物に触れられたように、背筋がぞくりとした。振り返ると、高価そうなスーツをきっちりと着こなした初老の男が、俺を見つめていた。2人目の相手は、この男か。
 男が背後に密着して、抱きしめてくる。解かれたバスタオルが床に落ちた。肩越しに俺の身体を確かめている。脇から腕が差し込まれ、胸の突起を指先で弄った。不覚にも身体がピクリと反応するのを止めることができなかった。これじゃぁまるで、感じているみたいじゃないか。スラックスの生地越しにも分かる男の堅くなったモノが、尻の割れ目に宛がわれる。若者のように鼻息を荒くはしていないが、興奮していることは手に取るように伝わってきた。
 片方の手が股の間に差し込まれ、脚を開かされる。背中を手のひらでゆっくり押されたので、窓ガラスに両手を付いた。尻の割れ目に顔を突っ込んできて、男は俺の穴を舐めた。股から差し込まれた手の指先が、亀頭の割れ目をなぞる。
 女とするときには感じたことのない別の快感を刷り込まれているように感じた。男の掌の中で、力なく垂れていた陰茎が、少しだけ膨張したようだった。男に抱かれて、それもたったの2人目で感じているのか?諦めの滲んだため息がひとつ零れた。
 一人目の男は、レイプするように俺を弄んだ。だが、この男の愛撫は絶妙で、女を扱うように優しく、繊細だった。だが、所詮、俺は男で、男に愛撫されることに喜びを感じないのだから、膨らみかけた陰茎が完全に勃起することはなかった。
 男は執拗に愛撫を続ける。どちらかと問われれば、肉体的には気持ちいい部類に入るだろう。だが、精神的なブレーキが働き、それを快感と認識することを許さなかった。
 舌と指を巧みに使い、処女ではなくなった穴を広げに掛かる。諦めの境地の今は、穴を広げられることに抵抗をしない。結局、痛い目を見るのは自分自身なのだから、積極的に身体を開くことはしないまでも緩める努力をしたのだった。
 男は、服を脱ぐこともなく、スラックスのファスナーを下し、ギンギンに勃起したモノを引きずり出した。堅い肉棒を尻の谷間に擦り付けられると、前回のトラウマか怯んでしまう。俺の躊躇など金を出した男には関係ないことのようで、強引にねじ込んでくる。ミチミチと肉を裂いて男が入ってくる。咆哮を上げる程ではないが、痛みが走り、自然と眉間に皺を刻んだ。
 鏡のようになった窓ガラスを介して男と目があった。
「いい顔するじゃないか。そそるぞ」
 きつい穴を広げながら、さらに男が入ってくる。
「あぁ凄い。こんないい男を抱けるなんて。こんなスポーツマンに突っ込めるなんて。ノンケなんだそうじゃないか」
 男は興奮を隠せないようだ。根元まで埋没するまで男の動きは止まらない。胃に届くくらいの長さだ。
「その顔が堪らないな。意思に反して男に突っ込まれるノンケのスポーツマン。妄想でしか果たせないと思っていた」
 男が腰を振り始める。腰を最後まで引くと、内臓が一緒に出てしまう感覚に襲われて怖くなった。
「やはり締まるな。いいマンコだ」
 悔しくて、情けなくて、泣くまいと思っていたのに、頬を伝って涙が一筋落ちた。
「泣いているのか?」
 目ざとく見つけた男は、俺をのぞき込む。情けなくて、瞼をきつく瞑った。空調のファン音だけの部屋で腰を振り続ける男。少しずつ男の荒い呼吸音が混ざっていく。俺は、ただ、早くこの時間が過ぎ去ってくれることを願うしかなかった。