2023年9月18日月曜日

ユニフォーム03

「もう少し伸ばしておいた方が、後が楽だから」

 そう言い訳などしながら、若い男の筋肉を揉む。丁寧にネットリとハムストリングスをマッサージした。ここがジムなら、マッサージチェアに俯きに寝かせて、ローションをたっぷり塗り拡げながら筋肉を伸ばしてゆくのだが、公園の林内では簡単な処置しか無理だ。

 まだ、成人に成り切っていない少年の残り香があった。恐縮しまくる年下の男を宥めすかしつつ、マッサージを続ける。視線が嫌らしくならないよう気遣いながらも、チラチラと覗くボリューム感たっぷりのインナーを楽しんだ。できれば、鼻を突っ込んで深呼吸したい。

 社会人野球をしていても超有名な選手でない限り、面が割れることなどないのだが、もし万が一、身バレでもしたら、選手生命が終わりかねない。だから、発展場への出入りや出会いアプリなどを使うことは断念していた。だから、通常の処理の方法は、もっぱら動画のサブスクを見ながら独りで出す程度だった。俺はウケなんだけれど、寮の風呂場で綺麗に出来るわけもなく、出会いもないとなれば、それが限界なのだ。

 だが、パソコン画面にかぶりついて、独りで擦りながら果てた後の虚しさといったらない。男の肌の温もりが欲しかったし、猛々しく天を衝く肉棒で、延々と泣きが入っても俺の内蔵を抉って欲しかった。狂おしいほどに誰かと身体を重ねたくて、仕方なかった。

 マッサージを続けながら、一時的に妄想の世界に入っていた俺は、薄い化繊のトレーニングウェアの股間がギンギンに育っていることに気づいて焦った。男は気付いていないようだったが、俺は変態ですと宣言しているようなものではないか。慌てて、マッサージを止め、取り繕った。

「そろそろ筋肉は伸びたかな?もう大丈夫だろ?立てるかい?」

 股間を隠すように蹲ったまま、男に立つよう促す。

「ありがとうございます。マッサージまでして頂いて、本当にありがとうございました」

 男は、立ち上がり、軽いストレッチをして筋肉の具合を確かめて礼を何度も口にした。

「◯◯大学の学生さん?」

「はい。陸上部の2年生です。短距離が得意種目なんですが、今日は自主練で、ひとりで走ってて。。。」

「そっか。俺は◯◯電気企業チームで野球やってるんだ」

「あっ。やっぱ、そうですよね?たしか、ピッチャーじゃなかったですか?」

「え?マジ?俺のこと知ってくれてる?」

「はい。この間、野球場で練習試合されてたでしょ?うちの大学の野球部に中のいい友達がいて、誘われて応援に行ったんです」

「嬉しいよ。ありがとう」

「いえいえ。その時、兄貴が投げられてて、強豪相手チームのバッターを三振に討ち取ってるの見て、すげぇ格好いい選手だなって見惚れてたんです」

「確かに。前回の練習試合は、凄い調子が良かったっていうか」

「俺は陸上部で、筋肉は鍛えないといけないけど、付けすぎても駄目だし、兄貴みたいなゴッツイ筋肉に憧れます。凄い格好いいなって。特に背腹筋から、大腿関連筋、大殿筋なんて惚れ惚れします」

「はは。よく安産型って弄られるんだ」

「マジっすよ。ほんとカッケーって」

 慣れてきたのか、少しずつ言葉遣いが若い奴のそれになってゆく。


2023年9月14日木曜日

ユニフォーム02

 企業チームに所属する野球選手は、とても微妙な存在だ。基本的には、野球をするために雇われている訳だけれど、当然ながら、会社員の職務も遂行する必要がある。いわゆる一般職に分類される職務で、比較的、業務時間などに融通が利くような契約となっている。午前中に業務を行い、午後から体づくりをはじめとする練習を行うのが日常的だ。

 その日の練習メニューは、個人それぞれの体力づくりがメインで、クラブハウスで一通りのマシントレーニングをした後、球場外に出てランニングするつもりだった。通常の練習であれば、練習用のユニフォームを着るのだが、今日は個人トレーニングであるため、普段使いの速乾性ワークアウトシャツとタイツという出で立ちだ。俺はピッチャーなので、足腰を徹底的に鍛えていて、どちらかと言うと野球選手よりラグビー選手に近いと揶揄される。野球界でよく言われる安産型体型のピッチャーである。

 うちのチームは100年近い歴史があり、グラウンドや全天候型練習場などの施設が充実している。グラウンドは、郊外の工場に隣接する形で整備されているのだが、さらに、その隣には、県営の総合公園があるため、ランニングは快適だ。公園の園路を軽快に走っていたとき、林内の園路際に蹲っている若い男が居た。大学生だろうか、陸上部のユニフォームを着た男が、苦痛に顔を歪めていた。

「大丈夫ですか?もしかして、太腿が攣ってます?」

 男のそばに寄り、声を掛けた。右側の太腿を両手で押さえているから、右の太腿が攣っているようだ。いつも持ち歩いている小さなケースをポケットから取り出し手渡した。

「天然塩です。そのまま口に放り込んで飲んでください」

 男の前に足を投げ出して座り込み、足の裏を胸に当てて爪先側を押しやりながら、男の膝を抑え込む。身体全体を使ってハムストリングスを伸ばした。しばらく、苦痛に悶えていた男の表情が、少し穏やかになった。長時間の運動で汗をたっぷりかいて、ミネラル成分が極端に欠乏するとこむら返りなどが起こりやすい。そんな時は、ポカリスエットを飲むか、ミネラルたっぷりの天然塩を舐めると治りやすいのだ。

「ありがとう。。。ございます。。。急に太腿が攣って」

 しばらく同じ体勢を維持し、痛みが完全に引くまで待った。

「あっ。。。すみません。。。スニーカーの跡がTシャツに。。。」

 男は狼狽し、ひどく恐縮している。

「大丈夫です。トレーニングウェアですから」

「助かりました。最初に脹脛がこむら返りして、悶絶してたら太腿に上がってきて、もうちょっとで腹筋まで行きそうでした。。。」

「良かった。腹筋まで攣ったら、かなり痛いですからね。できれば、天然塩を持ってる方がいいですよ。特に夏場は」

「はい。ありがとうございます」

 改めて男を観察する。とても若い。◯◯大学陸上部のロゴが入った薄い化繊のランニングシャツに短パン。ふくらはぎから、太腿の筋肉は、よく鍛えられており、ほぼ無毛だ。太腿は太いのに、大臀筋は小さく引き締まったプリケツだった。モロに、俺のタイプ。股の辺りが短パンから露わになっていて、小さく白いインナーが見えた。思わず喉を鳴らしそうになって、我慢するのに必死だった。