「もう少し伸ばしておいた方が、後が楽だから」
そう言い訳などしながら、若い男の筋肉を揉む。丁寧にネットリとハムストリングスをマッサージした。ここがジムなら、マッサージチェアに俯きに寝かせて、ローションをたっぷり塗り拡げながら筋肉を伸ばしてゆくのだが、公園の林内では簡単な処置しか無理だ。
まだ、成人に成り切っていない少年の残り香があった。恐縮しまくる年下の男を宥めすかしつつ、マッサージを続ける。視線が嫌らしくならないよう気遣いながらも、チラチラと覗くボリューム感たっぷりのインナーを楽しんだ。できれば、鼻を突っ込んで深呼吸したい。
社会人野球をしていても超有名な選手でない限り、面が割れることなどないのだが、もし万が一、身バレでもしたら、選手生命が終わりかねない。だから、発展場への出入りや出会いアプリなどを使うことは断念していた。だから、通常の処理の方法は、もっぱら動画のサブスクを見ながら独りで出す程度だった。俺はウケなんだけれど、寮の風呂場で綺麗に出来るわけもなく、出会いもないとなれば、それが限界なのだ。
だが、パソコン画面にかぶりついて、独りで擦りながら果てた後の虚しさといったらない。男の肌の温もりが欲しかったし、猛々しく天を衝く肉棒で、延々と泣きが入っても俺の内蔵を抉って欲しかった。狂おしいほどに誰かと身体を重ねたくて、仕方なかった。
マッサージを続けながら、一時的に妄想の世界に入っていた俺は、薄い化繊のトレーニングウェアの股間がギンギンに育っていることに気づいて焦った。男は気付いていないようだったが、俺は変態ですと宣言しているようなものではないか。慌てて、マッサージを止め、取り繕った。
「そろそろ筋肉は伸びたかな?もう大丈夫だろ?立てるかい?」
股間を隠すように蹲ったまま、男に立つよう促す。
「ありがとうございます。マッサージまでして頂いて、本当にありがとうございました」
男は、立ち上がり、軽いストレッチをして筋肉の具合を確かめて礼を何度も口にした。
「◯◯大学の学生さん?」
「はい。陸上部の2年生です。短距離が得意種目なんですが、今日は自主練で、ひとりで走ってて。。。」
「そっか。俺は◯◯電気企業チームで野球やってるんだ」
「あっ。やっぱ、そうですよね?たしか、ピッチャーじゃなかったですか?」
「え?マジ?俺のこと知ってくれてる?」
「はい。この間、野球場で練習試合されてたでしょ?うちの大学の野球部に中のいい友達がいて、誘われて応援に行ったんです」
「嬉しいよ。ありがとう」
「いえいえ。その時、兄貴が投げられてて、強豪相手チームのバッターを三振に討ち取ってるの見て、すげぇ格好いい選手だなって見惚れてたんです」
「確かに。前回の練習試合は、凄い調子が良かったっていうか」
「俺は陸上部で、筋肉は鍛えないといけないけど、付けすぎても駄目だし、兄貴みたいなゴッツイ筋肉に憧れます。凄い格好いいなって。特に背腹筋から、大腿関連筋、大殿筋なんて惚れ惚れします」
「はは。よく安産型って弄られるんだ」
「マジっすよ。ほんとカッケーって」
慣れてきたのか、少しずつ言葉遣いが若い奴のそれになってゆく。