2018年6月28日木曜日

肉体の檻06

そこは、今まで経験したことのない淫靡な場所だった。熱く脈を打つ粘膜が、敏感な指先を締め付けている。指腹に吸い付く粘膜は、痛いほど強くもなく、だからといって弛過ぎもせず、官能的で淫靡に心地よく締め付けてきて、俺の脳はパニック状態に陥っていた。
 だってそうだろ?人間の肉がこんなに嫋やかで、圧倒的にエロチシズムの権化のような触り心地だってこと、知る訳がないじゃないか。自分が指を突っ込んでいるその場所が、本来は別の用途に使われていることなんて、全くどうでも良かった。舌先と指先から連続的に送り込まれてくる欲情に、抗う術などある筈もなく、俺は狂ったように彼を求めた。
 もともとセックスに対するタブー意識がなかったことも手伝って、目の前にある肉体が、男のそれであることなど関係なかった。彼の尻の肉は、適度な弾力と柔らかさを持っていて、鷲掴みに握りしめて心地よかったし、何よりも彼の外側ではなく、内側の肉が俺を魅了し、もっと奥の方を知りたいと思わせた。
 ただただ、「突っ込みたい」、俺の脳が勝手に暴走状態に陥り、空回りし、渇望を埋めるただそのために、そこに有った。
 そのときの俺には、指でゆっくりと広げてやる気遣いなどなくて、亀頭をその粘膜にあてがい、彼の尻を強引に引き寄せた。反射的に身体を浮かそうとする彼を鷲掴みにし、無理やりこじ開けた。彼の顔が痛みで歪む。
「ちょっとだけ待って。。。」
 本能的に筋肉が強張り、異物を押し出そうとするのを精神力で我慢し、しゃがれた声で囁いた。
「ごめん。。。ごめんよ。。。」
 暴走状態だった脳が、彼の反応を反芻する余裕を得て、強張った全身の力を抜く。
「大丈夫。抜かなくていい。受け入れられるほど準備が整ってなくて」
 背中に回していた彼の腕の力が緩み、痛みを我慢しながら彼は微笑んだ。最初は拒んでおいて、気持ちいいと知った途端に、自分の欲望だけで暴走したことを恥じる。考えてみればそうだ。そこは入れるための場所ではないのだから、構造的にそうなっていないのだ。準備を整え、少しずつ解して初めて入れることのできる場所なのだった。
 自分の意思ではどうにもならない筋肉がほぐれ、痛みが遠のき、準備が整うのを待って、身体を沈め俺に体重を乗せる。俺のいきり勃ったものが彼に埋没してゆく。そこは、思った以上に熱く、柔らかく、繊細だった。粘膜を通じて、互いの血潮が混ざり合っていくように錯覚する。吐息とともに、彼の目の奥で静かな熱情が燃え始めるのを感じた。

2018年6月27日水曜日

肉体の檻05

声を掛けられた近くのマンションに案内された。一人暮らしの1DKの部屋は、小奇麗に片付けられていて、好感が持てた。若い男の部屋にしては、荷物が少ないように感じた。ベッドと小さなテーブルセットと本棚だけ。洋服は、半畳のクローゼットに収まる程度。シンクの脇に伏せたご飯茶碗と小鉢や皿が唯一の生活感を表している。キョロキョロと観察してしまった後で、不躾な行為だとひとり恥じ入る。
 勧められるままに先にシャワーを浴び、バスタオルを腰に巻いてベッドで待っていた。彼は今、シャワーを浴びているのだが、男が身体を洗うには時間が掛かっているようだ。
 街で見ず知らずの女をナンパして、ホテルにシケ込んだときの童貞男の気分だった。ふと、コンクリート階段で亀頭を包み込んだ肉の感触を思い出し、股間が痛いほど勃起した。初めての肉の接触が男の肉体であったことを嘆くよりも、「もっと気持ちよくしてあげるよ」と囁いた彼の声が、魔法使いの呪文のように俺を痺れさせていた。あれ以上に、もっと気持ちいいこと、それを想像するだけで、正直言って鼻血が出そうで、頭がクラクラする。ネットの動画で見てきた数々の卑猥な行為が脳内を占拠して、股間がもう我慢できないと痛みを発していた。
 風呂場の扉を開ける音に気づいたが、ジロジロ観察するのも気が引けて、無理やり、暴れる鼓動に耳を澄ませる。素っ裸のままの彼が俺の前に歩み寄り、跪いた。腰に巻いたバスタオルを外そうとしたので、腰を浮かせて協力する。彼の眼の前には、完全勃起、臨戦態勢の俺が息づいている。彼の股間のものも同様に勃起していて、腹に届きそうな勢いで反り返っているのを不思議な感覚で見下ろしていた。凸と凸でエッチするってことを今更ながら突きつけられた気分だった。
 彼の頭が俺の股間に覆いかぶさってきて、再びあの心地よい肉の感触が俺を包み込む。一心不乱に俺を慰める彼が、とても可愛く、同時に切なくもあった。確かに声を掛けてきたのは彼の方だけれど、一方的に俺だけが気持ちよくなるのは、後ろめたい気がしたのだ。
 両手で優しく頭を挟み込んで、ゆっくりと股間から引き剥がした。不信そうな表情の彼を引き上げて、唇を重ねた。初めてのことだから、ハッキリ言ってどうして良いか分からなかったけれど、唇を少し開いて、舌を差し込んだ。熱い彼の舌先が触れたとき、あまりの甘美さに背筋が痺れた。彼が俺を吸う。膝立ちの彼の尻を持ち上げて、膝の上に座らせて、さらに引き寄せた。尻の割れ目に先端が当たると、彼の眉間が皺を刻み、喉が鳴った。
 滲み出した先走りを指先に掬い取り、そこを探した。彼の反応を見ていれば、指先がまさぐり当てた場所が正解であることが分かる。指先の粘液を塗り拡げながら力を入れる。少し抵抗した後、その粘膜は俺を迎え入れる。締め付ける粘膜の熱さが指先からダイレクトに伝わってきて、俺の脳を揺すぶった。

2018年6月6日水曜日

肉体の檻04

人とつるむことが苦手な俺は、少々コミ障なところがあるのだろう。人嫌いとまではいかないのだけれど、男女を問わず暑苦しい関係性が苦手なのは事実だった。
 だから、正直な話、まだ経験がない。精神的な関係性を築けないのだから、肉体的な接触に至るわけがないのだ。性欲が湧かない訳じゃないから、もっぱら性処理は、手で慰めるしかなかった。今どきは、少しネットで検索すれば、エロ画像やエロ動画など、いくらでも落ちているから、ネタに困ることもないし。
 だが、生身の人間の肉の柔らかさや熱さは、衝撃といっても良かった。
『え?マジ?他人にして貰うって、こんなに気持ちいいものなの?』
 興奮で膨張しきった亀頭を包み込む男の粘膜が、あまりに気持ちよかったので、階段の袖壁に身体を預けなければ、立っていることも儘ならない。口の中の柔らかで熱い粘膜と自在に動く舌が、亀頭を締め付け、エラの裏の敏感な部分を責め立てる。遠い喧騒を押しのけて、男の口元が発するピチャピチャ、クニュクニュ音が俺を圧倒した。
 俺を含む男の口元は、この上なくエロい。いかにも大好物を口で慰めているといった恍惚とした表情が輪をかけてエロかった。経験がないから誰かのそれと比較できなかったが、自分で申告するだけに値するテクニックだと感じた。
 数日間、オナニーをしていなかったから、玉袋に極限まで溜まった精子が、出口を求めて突き上がるのを感じた。甘い吐息が勝手に漏れて、尻の筋肉が硬く引き締まり、太ももが小刻みに痙攣しはじめる。
 もう少しフェラチオを続けられたら盛大に拭き上げそうだった。他人の口の中に精を吐き出すことに抵抗を感じ、男の肩を少し押した。俺の限界が近いことを知った男は、一生懸命しゃぶっていた俺を吐き出した。もう限界が近かった竿を擦り上げようと握りしめたが、男がそれを邪魔した。
「もう。。。限界なんだ。。。」
 思わず懇願する声になる。だが、男は俺の手首を強く握りしめて、自ら刺激を与えさせまいとする。
「もうちょっとだから。。。」
 古びたビルのコンクリート階段で、2人の男がもみ合う形になる。片方は、ジーンズを足首まで下ろし、下半身をむき出した間抜けな格好だ。その股間は、腹にくっつきそうな勢いで反り返り、天を突いてヒクヒクと震えていた。
 男と揉み合う内に、今にも発射しそうだった勢いが少し削がれた。
「あぁ。。。」
 俗に言う寸止め、生殺しに合って、情けない吐息が漏れた。
「もっと気持ちよくしてあげるよ。俺の家にこない?」
 俺のエロ度はリミッターを超えていた。先程までの躊躇は、完全に霧散していた。男の手玉に落ちたのが、少々腹立たしくもあったのだが、毒を食らわば皿までだ。

2018年6月1日金曜日

肉体の檻03

「じゃぁさ。とりあえず試してみない?どっか人いないとこでいいからさ。しゃぶらしてよ。超気持ちいいから。絶対」
 思わず男の口元を見つめてしまった自分が嫌になる。最初に言ったように、俺にはタブー意識が低い。だから、女じゃないとHできないとは思わない。けれど、いきなり突っ込まれたら溜まったものじゃないし、全く知りもしない男と寝ようとは考えない。セックスに対するタブー意識が低いことと、常識がないことは違うと思うんだ。
 ただ、ここまで自信を持って言うからには、本当に気持ちいいのかな?なんて考えてしまった。やはり、そこは性欲を持て余している若い男のひとりなのだった。
 「ね。いいでしょ?減るもんじゃなし。気持ちよくなかったら止めればいいんだもん。たぶん、俺より力強いだろうし、無理やられちゃうほどひ弱じゃないっしょ?ね。行こ。さぁ」
 その辺は図々しいというか、屈託がないというか、微妙に揺らいだ気持ちを的確に突いてくる。ていうか、初めて会った男に、いきなり「Hしよう」と誘われて、話を聞いてしまっている時点で、俺って既にアウトなのだ。
 男は、細い路地に折れて、とあるビルの階段を登ってゆく。雑然とした町中の普通のビルなのだが、どこからも見通すことができない微妙な空間だった。コンクリートの冷たい肌触りと遠くに聞こえる雑踏の余韻が、戸惑う自分を慰めながらも、淫靡な気分にさせる雰囲気を持っていた。恐る恐る男に付いて登りながら、心臓がどくどくと早鐘をうち、経験したことのない興奮が俺を満たしている。
 前をゆく男が、階段の途中で急に立ち止まったので、つんのめりそうになって思わず男を抱きしめる形になった。計算された行動なのか、男の手の平が柔らかく、ジーンズの前を包み込む。微妙なタッチで玉の辺りを刺激されて、背筋の産毛がぞろりと逆だった。反射的に押しのける暇もなく、指先が俺の中心を這う快感に逆らえなくなった。
「思ったとおり敏感なんだ」
 ジーンズの前は急激にその容積を増していた。みるみる血流が海綿体を満たし、硬化を始める。厚い生地に圧迫された状態で、誰が見ても勃起していることが分かるほどに充実していた。男の指がはち切れそうに膨らんだジーンズのホックを外してゆく。
「へぇ。ジーンズの下はノーパンか。エロ」
 普段はボクサーパンツを履いているのだけれど、トレーニングで汗を掻きすぎて気持ち悪かったからノーパンだったのだ。
「でかいね。それに綺麗な形。ピンク色の艶やかなエラが張ったいいチンポ。太い血管が竿を這い廻っててエロすぎ」
 あまりに恥ずかしい論評に俺は気絶しそうなった。男はその場にしゃがみこんで、柔らかな肉で俺を包み込んだ。

肉体の檻02

「え?」
 流石に耳を疑うしかなかった。これまで何度も唐突なスカウトに合った経験はあるけれど、いきなり男にエッチしたいと告白されたことはない。
「やっぱ、ダメかな?」
 いやいやいや。やっぱ、ダメかなってそんな残念そうな顔されても。普通、うんいいよと返事する奴の方が可怪しくないか?と問いたい。ただ、なぜそのような唐突な発言ができるのか聞いてみたく、逆に興味を持ってしまった。
「いきなり、なんなんですか?」
「だよね。やっぱ。男は嫌い?」
 いや。そこじゃない。まぁそこも普通はあるけど、たぶん、そこじゃない。なんかズレてるなこのひと。
「でもさ。凄い綺麗な身体してるじゃん?君。俺もさ鍛えるのは好きだから分かるけど、ここまで完璧に綺麗な肉体の人ってなかなかいないんだよね。惚れたっていうか。後ろからみた君の尻の形なんて完璧だもん。ずっと見ながら歩いてるだけで幸せな気分になるってかさ。で、つい声かけちゃった」
 思わず身体を捻ってジーンズの尻を確認してしまう。
「大きすぎず、小ぶりすぎず、硬く盛り上がった美しいまでの双丘。ぴっちりと張り付いたジーンズの生地がエロくて、俺もジーンズになりたいと思わせる尻だ。完璧と言っていい。さらに、僧帽筋、大胸筋、腹筋、上腕三頭筋。。。エロさが際立つギリギリの体脂肪率といい、ボリューム感たっぷりの股間の盛り上がりといい、まさしく天恵」
 涎を垂らしそうな勢いで言葉を継いでいる。普通なら引いてしまうところだろうが、あまりの直截な物言いに興味を持ってしまった。
「そんなにハッキリと褒められたことないので、唐突だけど、嬉しいです」
「自分で意識ないの?だって、その気のある人間には拷問というか、垂涎の的というか。ストレートな男に例えると、まるで、半裸状態の叶姉妹が、目の前を歩いているような状況なんだもの。普通の男なら目で追いかけつつ、涎を垂らしそうな間抜けな表情さらしちゃうでしょ?やっぱ」
 ふむ。それは、例えだとしても、さすがに褒め過ぎだと思うけれどね。
「納得してない顔だなぁ。例えばだけど、その手の集会に君を放り込んだら、十分とせず、身ぐるみ剥がされて、2~30人に、強姦されること請け合いだって」
 いや。そんな表現されて普通の男は喜ばない。引く。間違いなく引く。不思議な人だなぁ。それでも、なぜか嫌悪感が湧かない。
「その前にさ。俺に味見させてよ。もう、涎と先走り垂れ流してドロドロになるくらい感じさせてあげるから。俺上手いんだよ?」
 いやいや。だから、俺を輪姦すのデフォルトにしないで。。。